<2010年 リサイタル海峡のアリア パート2

 

日本支配下の朝鮮に思いをはせて 
在日2世オペラ歌手・田さん 歌声で歴史振り返る

日本支配下の朝鮮に思いをはせて
在日2世オペラ歌手・田さん 歌声で歴史振り返る
あす日大カザルスホール

 在日コリアン2世のオペラ歌手、田月仙(チョンウォルソン)さんが、韓国併合100年の今年、日本と朝鮮半島の歴史を歌で振り返るリサイタルを21日午後5蕗から千代田区神田駿河台の日大カザルスホールで開く。
 植民地支配下の朝鮮に生まれ、幼いころに日本に渡り、苦労した亡き父母への思いも込めて歌う。

 リサイタルでは、植民地時代代に故郷を追われた人々の心を歌った曲や、政治的、歴史的な経繹で歌うことを禁じら
れた歌を披露する。全部で14曲で解説が付く。

 たとえば「夜明けのうた」。田さんは1998年、東京都の親善大便としてソウルで公演した。当時、韓国では日本の歌への規制があり、童謡は認められたが、「夜明けのうた」は歌謡曲だとして許可されなかった。田さんは歌詞を歌わず「あーあい」とメロディーだけを口にした。

 田さんの家族も、歴史の激動にもまれてきた。父、石萬(ソクマン)さんは昨年末、81歳で亡くなった。戦時中、15歳で日本に渡り、工場で働かされた。亡くなる前、病床では話すことができなかったが、田さんがアリランを耳元で口ずさむと、うめくような声を出して歌ったという。田さんの兄は戦後、帰国事業で北朝鮮に渡り、スパイ罪に問われ収容所で亡くなっている。

 田さんは「海をはさんだ日本、韓国、北朝鮮」隣国同士の関係をどう築いていったらいいのか。歴史を振り返り未来をみつめつつ、考えてみたい」と語る。

(2010年3月 朝日新聞)