在日オペラ歌手 田月仙さん 来月披露「日韓つなぐ」20年

 

在日コリアン2世のソプラノ歌手、チョンウォルソン(田月仙)さんが活動20周年を記念したリサイタル「永遠の愛を…」を2月開く。日本韓国はお互いにもっと分かり合えるはず。そんな思いも込め、3年前のJR新大久保駅で起きた事故で亡くなった人にささげる歌の本格的な発表の場にもする。

田さんは東京で生まれ育った。両親は韓国南部の慶尚道出身。「朝鮮半島が祖国で、日本が故郷」と言う。

東京での83年のデビュー依頼、85年には北朝鮮の音楽祭に出演。94年には韓国・ソウルでオペラ「カルメン」を演じ、南北朝鮮半島での公演を実現した。98年には東京都の親善大使としてソウルで日本語の歌を歌い、話題になった。昨年は、欧州での公演も成功させた。

田さんには代表曲がある。在米の韓国人が作った「高麗山河わが愛」だ。どこに住もうが、皆愛する兄弟ではないか。歌は多くの支持を集めた。しかし、2002年明きに北朝鮮による日本人拉致事件が表面化してから、この歌を歌うことにもとまどいを覚えた。あまりにも痛ましい事件。「朝鮮半島はもともと一つ。私にとってもすごくつらいことでした」

そんなときある歌と出会った。「ふたりの海」、3年前にできた曲だ。新大久保駅で2001年1月、線路に落ちた人と助けようとして亡くなった韓国人留学生と日本人カメラマン。2人にささげて、日本人と韓国人の詩人が詞をつけ、日本人が曲をつけた。

<ああ ふたりの海よ 愛の灯よ 私たちは忘れない>

この2人のためだけではなく、日本と朝鮮半島のはざまで犠牲になった数知れない人たちのために歌いたい。

 拉致事件で、在日コリアンたちも心に新たな傷を負った。田さん自身、日本と半島の狭間で翻弄され続けてきた。北朝鮮への帰国運動で北朝鮮に渡り行方不明になった親類もいう。だが、心の痛みはきっと共有できる。そんな思いがある。

 この20年間で、日韓関係は変わった。2002年のサッカーW杯以降、交流は大きく進んだと感じる。韓国映画やドラマが日本でブームになるのを見ると、感慨深い。

 「でも、まだ過去の歴史から解き放たれず、誤解を生むことも多い。正しき気持ちをつなぎたい。自分だからできることは、まだまだある」リサイタルは2月28日午後6時から。