日韓の声楽家が来月、新宿でコンサート 

 歌声、W杯の追い風に 東京交響楽団が演奏 両国の名曲、互いが披露 在日コリアン歌手 田月仙さんが企画 田さん 『両国間にあるもの 超えられれば』

 日韓共催のサッカー・ワールドカップ(W杯)を盛り上げようと、両国の名曲を歌う「日韓ガラ(祭典)コンサート−海を越えて」(外務省、東京都など後援)が来月十一日午後五時から、新宿区西新宿三の東京オペラシティコンサートホールで開かれる。韓国で初めて正式に日本語の曲を歌った歌手で在日コリアンの田月仙(チョン・ウォルソン)さんが企画。「オーケストラで日韓の歌だけを歌うコンサートは初めて。W杯を応援する祝砲に」と期待を込める。 

 また遭えたね また出遭えたわ

 違う季節をめぐりながら 

 会える日を夢にみていた− 

 渋谷区恵比寿南のスタジオ。出演する合唱団が、今回のコンサートで披露するオリジナル曲「海を越えて」の練習を始めた。澄んだ歌声や力強くメリハリのある声が、りんとした空気を揺り動かす。 

 メンバーは十代から七十代の男女。在日コリアンの女性は「参加できてうれしい。これがきっかけで、日韓の交流が深まれば」と話した。

 

 #南北公演も実現♪ 

 田さんは東京生まれの在日二世。「祖国は朝鮮半島、ふるさとは日本」との思いで、デビュー当時から韓国の歌をステージに採り入れた。史上初めて、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、韓国での南北公演を実現したことでも知られる。 

 日韓が激しい誘致合戦を繰り広げたW杯が「共催」に決まった時、驚くとともに、前例のない開催システムや日韓の歴史的関係から心配が先に立ったという。 

 しかし、一九九八年、東京都親善大使としてソウルで「浜千鳥」などを歌って心が固まった。ソプラノ歌手としてヨーロッパのオペラを歌うことが多かったが、「血であり、肉であり、魂の底から歌えると感じるのは韓国と日本の歌だと分かった」という。

   約二年前、今回のコンサートの開催を決めた。

 

 #日韓の歌手競演♪ 

 交流のあるアーティストに呼び掛け、韓国オペラ界で絶大な人気を誇るテナー朴世源さんらの出演が決定。日本側からは、バリトンの大久保真さんらが賛同した。 

 コンサートの演奏は東京交響楽団が担当。「アリラン」「懐かしい金剛山」「椰子(やし)の実」「ふるさと」など、人々に愛され、芸術性も高い名曲が披露される。日韓の歌手が互いの国の曲を歌う場面もつくる。

 

 #150人の合唱団♪ 

 注目されるのは、日本語と韓国語が交じったデュエット曲「海を越えて」。日韓の友情が深まることを祈りながら製作した。日韓混成で結成された百五十人の合唱団がコンサートに加わる。合唱団の日本人は、ハングルにカタカナをふり、韓国語を覚えた。公演直前の五月初旬に、CDも発売される。 

 田さんがデビューした約二十年前、両国で互いの国の歌を聴く機会はほとんどなかった。だが、今は韓国の曲が日本のヒットチャートをにぎわし、韓国内で日本の歌の公演が解禁されている。田さんは「感慨深い気がします。W杯が終わっても、いい形で交流が続いて、両国の間にあるものを超えられれば」と話す。 

中日新聞社