[顔]芸術祭の音楽部門に外国人として初参加するオペラ歌手 田月仙さん
チョン・ウォルソン 東京生まれの在日韓国人2世。83年にオペラ歌手デビュー。二期会会員。39歳。
◆国を超えて心一つに
二年前、文化庁芸術祭の参加資格が、日本人以外にも開放された。それ以来二人目、
音楽部門では初めての外国人となる。
「十四年間に及ぶオペラの舞台やコンサート活動が評価されたんでしょうか」
平壌とソウルで公演した最初の在日韓国人として知られる。一九八五年、招待を受けた平壌の世界音楽祭では、六〇年代に日本から帰国船で渡ったいとこと再会、「まさかもう一度会えるなんて」と胸を詰まらせた。カルメンを演じた九四年のソウルでも、両親の故郷・慶尚南道に住む親族と初めて対面した。
「私も南北と日本に分かれた離散家族の一人」を強く実感するとともに、世代を超えた反響の大きさに、「統一」を夢見る同胞の熱い思いをひしひしと感じたという。
「引き裂かれてしまった人々の痛み、統一への願いを、歌と踊りに託したい」
この思いが、ひと味違ったステージ演出につながる。
あす十三日、東京・千代田区の紀尾井ホールで開く芸術祭参加のソプラノリサイタル「薔薇(ばら)物語」では、自らのフラメンコ舞踊も交え、世界六か国の花にまつわる歌曲を原語で歌いあげる。
国際色豊かな舞台には、「音楽を通して国境の壁を超えましょう」という歌姫の願いが凝縮している。
売り物のドラマチックな表現力で、「見る人の心に残るリサイタルにします」。