チョン・ウォルソンがオペラリサイタル

12日に中野ゼロホールで

 在日韓国・朝鮮人として初めて、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と韓国で歌っ たソプラノ歌手、チョン・ウォルソン(田月仙)=写真=が十二日、東京・中野ゼロ ホールでオペラリサイタルを開く。後半にはフラメンコも入ってビゼーのオペラ「カ ルメン」のハイライトを歌う本格的な公演。

 チョンは一九五八年、東京生まれ。両親が慶尚南道出身で、日本に来た在日二世。 桐朋学園短大で学んだ。一九八五年、平壌で開かれた「世界音楽祭」で朝鮮民謡など を歌い、金日成国家主席から名前が記された腕時計を贈られてもいる。また昨年十月 七日には、ソウルの「芸術の殿堂オペラハウス」で「カルメン」の主役を歌っている。 「在日だからこそ初めて実現できました。どちらも私の祖国ですから」と言う。

 今回のリサイタルも日韓協会と日朝協会東京都連合会両方の後援をもらっている。 「いまだに対立している面がある両方に聴きにきてほしい」と願う。そして前半に 「鳥よ鳥よ青い鳥よ」と「高麗山河 わが愛」二曲の朝鮮民謡と歌曲を入れ、彼女の メッセージを伝える。「私たちの畑を荒らさないでくれ」と歌う「鳥よ−」は、戦前、 鳥が日本を連想させるとして演奏禁止されていた作品。「高麗山河−」は、「南に住 もうが、北に住もうが愛する兄弟ではないか」という歌詞だ。

 後半は「カルメン」のハイライト。「たばこ工場のけんかのシーン」では、岩崎恭 子フラメンコ舞踊スタジオのメンバーも加わり、彼女の激しい踊りを見ることができ る。「小さいころからピアノや踊りを習っていました。大学に入って総合芸術のオペ ラこそ私を生かせると思いました。韓国人は感情が豊富でそれをコントロールします。 イタリア人とわりと近いところがあると思います。オペラ向きではないでしょうか」

 今後も“三つの国の掛け橋”として活動を続けるという。しかし「私は芸術家とし て水準の高いオペラ歌手になりたい。在日であることや、国籍は関係ありません。た だ問題は付き物で、真っすぐに受け入れて突き進むだけです」と話していた。