三浦安浩・特別演出オペラ「トスカ」とチョン・ウォルソン(田月仙)「海峡のアリア」

今年9月末、2022年特別演出版のオペラ「トスカ」が上演される。主役と企画は魂の歌声と美しい舞台姿で、圧倒的な存在感を放つオペラ歌手・チョン・ウォルソン(田月仙)さん(二期会ソプラノ)。
「トスカ2022」の構想は2007年に出版され小学館ノンフィクション賞を受賞したウォルソンさんの著書「海峡のアリア」にある。「海峡のアリア」はNHK「海峡を越えた歌姫」ほか当時多くのマスコミで話題になった。帰国事業で北朝鮮に渡り、捕らわれた兄を救うため、ウォルソンさんが北朝鮮の最高指導者に歌を捧げ、それがきっかけになり、様々なことににつながる。
 一方、プッチーニ作曲「トスカ」の舞台は、政治腐敗が続く18世紀のイタリア。革命を信じる反体制派の画家が、投獄され、拷問され、死刑宣告を受ける。その画家の恋人・歌姫トスカが、愛する人を救うため命をかけて戦う物語。
 「海峡のアリア」では、神のように崇められていた主席の前で革命歌謡を独唱する事になった時、不思議にも ウォルソンさんの兄が一番好きだったオペラ・「トスカ」のアリア「歌に生き愛に生き」が脳裏に浮かび、舞台裏の暗闇の中で「トスカ」の二幕最後のセリフ(E avanti a lui tremava tutta Roma!(この男の前で全ローマが震えていたのだわ)を口ずさんだ…。
 ウォルソンさんの心の奥に刻まれている特別な記憶と共にあるのがトスカ。そして自らの人生とも重なるこの「トスカ」の特別演出版の構想を長年持ち続けた。
 その後、ウォルソンさんは世界の舞台でオペラやコンサートに出演しながら、外務大臣表彰を受けるなど日韓を歌を繋ぐ役割も担ってきた。また、2015年からは自らプロデュースする創作オペラ「ザ・ラストクイーン 朝鮮王朝最後の皇太子妃」を9回もアンコール公演を続けるなど、目覚ましい活躍をしている。
 そして2022年の今、ウクライナ危機など、トスカの時代と重なる激変の時代だと直感して、満を持して「トスカ」 特別演出版 を上演することにした。
 ウォルソンさんの呼びかけに、オペラ演出家の騎手・三浦安浩さんが応じた。三浦安浩さんはオペラ界の超多忙な売れっ子演出家。三浦さんは、2022年の混沌と変革の時代とトスカの時代を重ね、舞台の上に「過去と現在を結ぶ橋」を作るなど、混沌の現代を意識した特別演出を進めている。三浦さんは、時空を超えて生きるために命を賭す者たちを描くと意欲的だ。
 また、主演のテノール・カヴァラドッシ役には、日本テノール界を代表する貴公子・樋口達哉さんと上本訓久さんがダブルキャスト。カヴァラドッシの理想とも言える樋口さんや、圧倒的声量で観客をひきつける上本さんの、二人の個性が見逃せない。そして、オペラで重要な悪役警視総監スカルピアにはテレビでもおなじみの、絶好調の人気バリトン・今井俊輔さんが出演。
 もちろん、トスカ役はソプラノ歌手・ウォルソンさん。他に豪華な出演者を揃え、他では見ることの出来ない圧巻の舞台が期待されている。

 

 
 

写真・練習風景

 

ホームページ http;//tosca2022.com